航空会社トピックス

ベトナム航空がスカイチーム脱退?ANAとベトナム航空の提携の中身とは

2016年5月28日にANAホールディングスとベトナム航空が業務資本提携で最終契約を締結し、2016年10月30日から提携がスタートしました。

ベトナム国営企業であるベトナム航空の民営化に向けた株式売却の一環として、8.8%相当の株式をANAホールディングスが取得するというものです。

注目すべきは、アライアンスの異なるANAとベトナム航空の動き、そしてマイレージ加算や特典航空券についてです。

ANAはガルーダインドネシア航空、フィリピン航空とアライアンスの異なる、あるいは独立系の東南アジアの航空会社と積極的にコードシェア提携を結んでいますが、ベトナム航空との提携はどのようなものなのか、非常に気になります。

ANAとベトナム航空の提携の背景

ベトナム航空の思惑

ベトナム航空は、国内のほうは赤字路線を抱えて苦しい状態が続いているようです。

背景には、ベトナム国内がLCCや長距離バスの台頭で競争にさらされている点、ビジネスと観光地がハノイ、ダナン、ホーチミンに集約され、その他の空港の需要がないことがあるようです。

一方で、ベトナムの経済成長に乗って、海外の就航地を増やしています。

そのため最新鋭のボーイング787-9、エアバス350-900をいち早く導入するなど、ある意味国内路線よりも海外路線強化で攻めに転じています。

ANAの思惑

ANAもベトナム航空と同じように、日本の人口は減少に転じているので、これ以上の国内路線の拡大は見込めません。

赤字・不採算路線は、AIRDO、ソラシドエア、IBEXエアライン、スターフライヤーなどの航空会社に移管を進めています。

一方で、国際線は伸びしろがあるため、北米とアジアのハブ機能の強化を狙って、次々に就航地を増やしています。

ANAとベトナム航空の両社の思惑

ベトナム航空は、民営化政策指針の一環として株式売却をしたかったこと、そしてANAの旅客サービス、機体整備、ケータリングなどのノウハウを吸収したいなどの思惑があります。

ANAは、TPPを見越したベトナム路線強化、2016年夏に就航するカンボジアやラオスで先に就航しているベトナム航空の路線網の活用などが思惑としてあるでしょうし、JALとベトナム航空の提携を切ることも当然考えてのことでしょう。

両社とも自前で路線開拓するよりも、相互提携するほうが短期間でしかもコストを抑えて路線を拡大できます。

コードシェアとマイル加算は2016年10月30日から


ANA WEBサイトより

冬ダイヤが始める2016年10月30日から、日本とベトナムの国内線25路線、日本とベトナム間の国際線10路線でコードシェアをスタートしました。

そして気になるマイレージサービは、ANAマイレージクラブ会員とベトナム航空のロータスマイル会員の双方ともに、両社のコードシェア便でのマイル加算可能になります。


ANA WEBサイトより

※1 メンバーご本人様に加え、ご同行者1名様まで運航会社指定のラウンジをご利用いただけます(GA運航便は※2をご確認ください)。詳しくは運航会社にご確認ください。
※2 GA運航便にご搭乗の場合、「プラチナサービス」メンバー、スーパーフライヤーズ会員のお客様は、メンバーご本人様のみラウンジをご利用いただけます。
※3 重量制の場合には、お預けになる個数に制限はありませんが、各社諸条件がありますので詳しくは運航会社にご確認ください。
※4 1個あたりの重量は、エコノミークラス23kg、ビジネスクラス32kgまでとなります。
※5 4U/EW運航便は、ラウンジのみ、ANAとのコードシェア便以外にご搭乗の場合もご利用いただけます。
※6 ANAとのコードシェア便以外にご搭乗の場合も、EN運航便全便で上記空港サービスをご利用いただけます。

スター アライアンスに加盟していない提携航空会社運航便にご搭乗の際の空港サービス

さらに、ベトナム航空の就航便でかつ、ANAとのコードシェア便である場合に限り、ラウンジ利用をはじめとする上級会員の優待を受けられる、とあります。

ベトナム航空は、残念ながらスターアライアンス加盟航空会社ではないため、プレミアムポイントの積算はできず、上級会員修行には使えません。

ただ、チケット代がANAに比べて安いので、ANAの上級会員(ダイアモンド・プラチナ・スーパーフライヤーズ)で低価格で日本~ベトナム間を移動したい方、ラウンジを利用したい方に提携は朗報です。

ベトナム航空はスターアライアンス入りするのか

ANAは1999年にスターアライアンスに加盟、ベトナム航空は2010年にスカイチームに加盟と異なる航空会社連合に属しています。

ワンワールドを含めた3大アライアンス(航空会社連合)ができる前は、個別に航空会社間で提携が行われていましたが、3大アライアンスができた後は今回のANAとベトナム航空のような資本提携に踏み込んだ提携は数えるほどしかありません。

LATAM航空(ワンワールドに加盟するチリのLAN航空とスターアライアンスに加盟するブラジルのTAM航空が合併)、アメリカン航空(ワンワールドに加盟するアメリカン航空とスターアライアンスに加盟するUSエアウェイズが合併)、ユナイテッド航空(スターアライアンスに加盟するユナイテッド航空とスカイチームに加盟するコンチネンタル航空が合併)など、いずれも合併して片方のアライアンスに移籍するケースが目立ちます。

そうなると気になるのが、ベトナム航空がスカイチームからスターアライアンスに移籍するかです。

ベトナム航空は宗主国だったフランスのエールフランスの支援を受けて、スカイチームに加盟したのが2010年。

当時アジアでスカイチームに加盟していたのは結成メンバーの大韓航空を除けば、2007年に加盟した中国南方航空だけでした。

その後2011年にチャイナエアライン、中国東方航空と上海航空、2012年に厦門航空、2014年にガルーダインドネシア航空と、スカイチームはアジアでの存在感を拡大させています。

ベトナム航空がスカイチームから抜けてしまうと、東南アジアではガルーダインドネシア航空だけとなってしまうため、アライアンス間でのバランスが悪くなってしまいます。

今後どうなるかは不透明ですが、現時点ではベトナム航空のスターアライアンス移籍の可能性は現時点では低そうです。

2016年6月2日追記

スカイチームのリーダー的存在のデルタ航空はベトナム航空とのコードシェア継続を言明したようです。

デルタ航空は、2016年冬スケジュール以降も、ベトナム航空との共同運航(コードシェア)を継続すると明らかにした。

デルタ航空はTraicyの取材に対し、「ベトナム航空は今も航空連合スカイチームの一員であり、デルタ航空とベトナム航空との協力関係に変更はありません。冬スケジュールでも引き続きデルタ航空運航の一部路線でベトナム航空とのコードシェアを行います。」とコメントした。
http://www.traicy.com/20160602-VNDL

2016年夏スケジュールでは、ベトナム航空はデルタ航空運航の成田~ポートランド、ニューヨーク、アトランタ、ミネアポリス、シアトル、ロサンゼルスをコードシェアしています。

ANAとの2016年冬スケジュール以降の提携では、デルタ航空とのコードシェア対象となっていない、成田~サンフランシスコ、シカゴ、ヒューストン、ワシントン、サンノゼなどがコードシェアする可能性もありますが、どうなるか要注目です。

まとめ

2016年5月には日・ラオス航空協定が発効され、双方の空港(羽田空港を除く)への就航が自由にできるようになりました。

ベトナム航空は、ベトナムとカンボジアからラオスへ複数の路線を持っているので、ANAがコードシェア便でラオスに乗り入れることも考えられます。

さらにベトナム航空は、カンボジアのフラッグキャリアであるカンボジア・アンコール航空49%を出資する大株主であることから、今後カンボジア国内路線でのANAとベトナム航空との提携も考えられます。

さまざまな思惑が背景にある、ANAとベトナム航空との今後の提携から目が離せません!


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